大きな青空の下で君を見つけた
私は、自分の通う病院へ向かった。


いっそのこと、入院しちゃおうか。


でも、入院費とかないから無理だよね。



そんなことを考えながら、病院の前をうろうろしていると後ろから声をかけられた。



「沙彩。」




私に声をかけてきたのは、主治医の奥本先生だった。



この人には、自分でも不思議なくらい正直になれる。



「沙彩、その荷物どうしたんだよ。」



俯く私の顔を覗き込んだ。



「顔上げなさい。とりあえず、診察はさせて。今、呼吸辛いだろ。」




肩で息をする私を見て、先生はそう聞いてきた。



それから、先生に肩を支えられながら私は診察室へ連れて行かれた。




淡々と診察が進められ最後に、




「奥の部屋に、仮眠室があるのは分かる?そこで、横になって待ってて。私はまだ仕事が残ってるから、終わったらすぐにそっちへ向かう。



浅野さん。彼女を仮眠室へ連れて行って。」




「分かりました。」




私は、看護師の浅野さんに仮眠室へ運ばれた。




「沙彩ちゃん、何かあったらすぐに呼んで。我慢しないでね。」




枕元にナースコールを置いて、浅野さんは部屋を後にした。



それから、しばらく私は深い眠りについていた。



気付いたら、辺りは真っ暗で私はふわふわした頭で身体を半分起こした。




「…沙彩ちゃん。起きた?」



「すみません。ベッドお借りしてしまい。」




「いいんだ、それより何があった?」



奥本先生は、近くの椅子に座り私の荷物を見てそう口にした。




「ついさっき…母に捨てられたんです。住んでるアパートからも追い出されちゃいました。」




「沙彩ちゃん…。」




「私、きっと誰からも必要とされてない。あんな人でも、心のどこかで私を必要としてくれているって少し希望持ってたのに…。」




「沙彩ちゃん。起きてしまった現実を変えることは出来ない。それがたとえ、どんなに過酷で辛くてら苦しくても乗り越えていかないといけないんだ。


沙彩ちゃん。私はいつだって君の味方でいる。それに、君の成長をずっと見守っていたいんだ。



だから、私の家に来ないか?」




私は耳を疑った。




「え?」




「心配なんだ。沙彩ちゃんのことが。何も考えなくていいから、とりあえず家に来なさい。」



どうせ、行く宛てもない。



「分かりました。よろしくお願いします。」




私にとっても、この人には素直になれるからもしかしたら居心地がいいのかもしれない。



私そう答えたことに安心したかのように、奥本先生は優しく私の手を包み込んだ。
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