大きな青空の下で君を見つけた
ーside奥本ー


お昼の休憩をとって、午後の外来の診察時間までしばらく時間が空いていたから、気分転換をしようと外へ向かった。


病院の前をうろうろするキャリーケースを持った沙彩ちゃんがいた。



頬には、薄らだけど青紫になっていた。


きっとまた何かあったに違いない。




肩で呼吸をしている彼女。



きっと、喘息の誘発になる人混みや、煙草の煙を吸ってしまったということはすぐに分かった。




沙彩ちゃんに急いで声をかけ診察し、仮眠室へと連れて行った。




それから、さっきまでの息苦しさから解放されぐっすり眠る沙彩の姿を見て安心した。




その間に、聴診を済ませてから午後の外来へと向かった。




何があったのか、全てを話してくれたわけではないけど、彼女を引き取りたい気持ちが強く、彼女に一緒に住むことを提案していた。




いっそのこと、養子にしたいけど実際のところ沙彩の母親に会ったこともなければ、自分がそんな勝手なことをして、更に沙彩に危害を被らせるようなことになるのが怖かった。




それにしても、本当にとんでもない親だ。




実の娘を、捨てるなんて。




久々にこみ上げてくる怒り。




それよりも、沙彩ちゃんの心が心配だった。




きっと、俺に今見せているのは嘘の笑顔。



無理して心配かけないようにして作っている笑顔ってことは、すぐに分かった。




だけど、どんな理由であっても頼ってくれたことが1番嬉しかった。




最初の頃は、俺に症状を隠し何も話してくれなかった。



だから、少しずつでもこうして心を許して来てくれているということが嬉しかった。



「沙彩ちゃん。帰ろう。」



なるべく沙彩ちゃんに冷たい風が当たらないように、朝に来てきた薄めのコートを沙彩ちゃんにかけた。




いくら、4月とはいえまだ寒いからな。




日中と、夜の気温差が激しい。




「車回してくるから、ここで待ってて。」



沙彩ちゃんをソファーに座らせ車を正面玄関まで回した。



「沙彩ちゃん、お待たせ。」



「先生…」



沙彩ちゃんの視線の先を見ると懐かしい人がそこにいた。




「佐伯君。」


「奥本教授。お久しぶりです。」



「あ!沙彩ちゃん!」




突然立ち上がり、脱走しようとした沙彩ちゃんの手首を掴んだ。




「どこに行くんだ。いつも走ったらダメって言ってるだろ。」



「奥本先生…私、先に車に乗ってていいですか?」



「いいけど、気分悪い?」




「いや、大丈夫です。」


沙彩ちゃんは、俺と佐伯君に頭を下げ車へと向かった。
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