大きな青空の下で君を見つけた
ーside沙彩ー


私の帰る場所がなくなった。


これから、どうすればいいの?



私に残された選択。



それは、自ら命を絶つこと。




心が弱いとか思うかもしれない。



けど、家もなければお金もない私は、どう生きていけばいいの?



生きていく手段は、きっともうない。




私は今日、そう感じた。




私が20歳になるまでは、どんな母親でも捨てたりしないと思っていた。



けどそれは、私の単なる理想だったのかもしれない。




お腹を痛めて産んだとしても、その時の気持ちがずっと残されているわけでもない。




いつか、変わるなんて期待していた私が馬鹿だった。



そんなことを考えていると、先生がドアをノックした。




「沙彩ちゃん。起きたかな?」




「はい。」




「朝の聴診したいんだけどいい?」





「はい。」




私は、ゆっくり扉を開けるとソファーに座るように促され、背もたれに身を任せるように身体を投げ捨てていた。



「だるいかな?」



そんな様子を見ていた奥本先生は、私の額に手を当ててきた。



ひんやりした先生の手が、冷たくて気持ちが良い。




額に当てている先生の手の上に、私も手を添えた。



それから、奥本先生は少し微笑んで、


「少し熱持ってるから、熱測ろうね。」




と、私に体温計を入れた。




「どこか、とくに体調悪いところとかあるかな?」




奥本先生に、心配かけたくなくて首を横に振った。



「そっか…。体調次第で、今日は学校休もう。担任の先生に、連絡を入れておきなさい。」



「それは嫌です。」



「沙彩ちゃん。無理して行って、後で辛い思いをするのは沙彩ちゃんだよ?今は、ゆっくり休んで。昨日も遅くまで勉強していたみたいだったから。」




部屋の明かりがついていること、先生は気付いていたんだ。



「すみません。」




「どうして謝るんだ?」



「いや…その。電気代かかっちゃいますよね。」




すると、先生は大きなため息をついた。




やっぱり、先生の家にお世話になること、迷惑なんだ。




「全く君は。そんなこと、どうだっていいんだ。ただ、沙彩ちゃんに身体を大切にしてほしい。いい?一緒に暮らしている以上、前みたいに無理したり我慢したりしないでほしい。」




「…はい。」



返事をすると、タイミング良く体温計が鳴った。



体温計を取り出し、先生に渡した。




「…沙彩、今辛いだろ?」



「え?」




言われてみると、さっきから視界がぼやけていて身体も重く熱くなっていた。




「辛い…です」



何とか答えてから、私の意識は段々と薄れてきた。



「沙彩!」




「沙彩、頼むから意識だけは保って。」




少しだけ聞こえる、先生の言葉。



だけど、先生。



無理みたい。



私は気づいたら意識を完全に手放していた。
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