大きな青空の下で君を見つけた
高熱が続いていた時はずっと考えてなかった。



「私…。親に家を出て行けと言われたんです。お前に母親って呼ばれたくないって。」



熱が落ち着いた頃に自分が捨てられたことを思い出して、気付いたら先生に対してそう言葉にしていた。




「たとえお腹を痛めて産んでも、簡単に捨てられることもあるんですね。



血の繋がりが唯一の信じる術だったのに。



少しだけ信じてました。



でも血の繋がりなんて、信用できませんね。」








「沙彩ちゃん…」




「どんなことされても、私にとって、母親は1人なのに。たった1人の家族だったのに。私に家族って呼べる人がいなくなった。」



私は、止められなかった。



ずっと、心の奥底にしまいこんだ言葉をこの人に話していた。



何も言うことなく、ただ私の手に添えて聞いていた。



何も言われなくても、その沈黙がなぜか安心できるように感じた。




私、病気で気持ちのコントロールができなくなったのかな。





「これから私は、1人で生きていかないといけないのかな。



私は、どうやって生きていけばいいのかな。」








「なぁ、沙彩。」





先生から突然呼ばれた名前。





心臓の鼓動がうるさいぐらい高鳴っていた。







「なに?」






動揺している心を、見透かされたくなくて自分の心を隠すことに必死だった。







「沙彩がよければ、しばらく家にいないか?」







「え?」







「元々俺は、君のためにここに来た。



担任の先生や、校長先生なりの君への配慮だと思う。



君のためにここに来たんだから、俺は君のことを守るって最初から決めていた。





だから、沙彩が本当に安心できる場所を見つけられるまで、俺の所にいないか?




1人でいても、不安でこの先のことをちゃんと考えられないと思うんだ。




沙彩には、前向きにしっかり生きてほしいから。」






「先生…。」







先生は、少しだけ笑って親指で私の涙を拭ってくれた。






大きな手が、私の頬を包み込むその温かさが私は安心することができた。
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