好きにならなければ良かったのに
幸司の唇が首筋へと這っていくと美幸は思わず声が漏れてしまった。自分でも恥ずかしいと両手で口を塞ぎ、必死に声を押し殺している。
幸司は、そんな美幸の手を握り締めては口許から手を離させた。
「もっと感じている声を聞かせて」
「でも……あ、そんな」
「恥ずかしがらないで、その声が聴きたいのだから」
幸司が何を聞きたがっているのか、そんなことすら分からない美幸は、ただ顔を赤らめては幸司にされるがままジッと横たわっていることしか出来なかった。
押さえこんでいた美幸の腕から手を離した幸司は、横たわる美幸の服のボタンを上から順に外していく。ボタンが千切れない様に一つずつ丁寧に外しながら、優しいキスが首筋から胸元へと移動していく。熱い息と湿気交じりの柔らかい唇の微妙な動きを、その初々しい肌から伝わる。すると自分の体の奥から未知なる何か熱いモノを感じた。
その熱は押し寄せる波のように、体全体に一気に広がっていく。
「あ……やっ」
「恥ずかしくないから、じっとして、力抜いて」
「あ……あっ!」
自分の体なのに何が起きているのか。美幸は突然襲った激痛に裂けるかと思った体を仰け反らせた。痛みの残る中、幸司に優しく包み込まれ躰の隅々まで愛され、その証拠を次々と残されていく。
その力強く男性らしい行為に美幸はこんなにも未知なる世界があるのだと生まれて初めて知った。
そして、その世界は痛みだけしか感じなかった最初とは違い、次第に幸せと悦びを感じるようになる。それが、とても心も体も満たされていくのだと気付くと、幸司との夜がこんなにも素敵なものだと初めて知ることになる。