好きにならなければ良かったのに

 幸司の言う通りで、新婚旅行から戻る二人を待ち構えているのは二人だけの新居だ。短い結婚準備期間に幸司の父親である榊セキュリティ(株)の社長が準備してくれた一戸建て。二人の新しい生活の場となる真新しい家が二人の帰りを待っていた。

 急きょ行った結婚式にしては式は素晴らしく新婚旅行も人並みに行くことが出来た。いきなりの予約に旅行会社との話に折り合いが付くかと心配していた美幸だったが、観光名所への旅行ではなかったが満足いく旅行となった。素晴らしい景色の中で幸司との熱い時間を過ごせるお忍び旅行が出来たことにとても喜んでいた。

 世間一般で行くような新婚旅行ではなかったが、それでも蜜な時間を持てた美幸は不満を言う事なく甘い時間にとても満足していた。

 そして、いよいよ、旅行から帰る日。
 美幸は寂しそうな顔をしながらも新居となる幸司との新しい生活の場へと心は弾み、これから夫婦として過ごす家を楽しみに旅行から帰って来た。

 二人が宿泊したお忍び宿へ迎えに来た車に乗った二人は新居となる自宅へと向かった。新居は広い敷地でその中央に位置する家は屋敷と呼ばれるような大きな洋館で、まるでどこぞの金持ちの家というような風貌の豪邸だった。

「凄い、大きな家」

「俺は榊家の跡取りだから美幸にはしっかり後継者になる子どもを沢山産んで欲しんだ」

 熱い視線を送られると美幸は恥ずかしそうにしながらも幸司の妻になったのだからと頷いた。きっと、そう遠くない日に赤ちゃんも授かるだろうと思うと美幸は頬を赤く染めた。


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