嘘ツキ彼氏
翌日からあたしは毎日友希の家に通った。友希の家族は気さくで、急に遊びに行っても嫌な顔一つしなかった。そして友希が言った通り、友希の両親は今の彼女に嫌気がさしていたようだった。

「痩せの大食いで、あげく好き嫌いも酷くてね…リクエスト作っても食べなかったりするし…」
「見てると金目当てじゃないかって思えてくるんだよ」

そう、口を揃えて言った。

「美羽ちゃんを彼女にしたらいいのに…」

あたしから少し離れたところで友希にそう言っていた。ほんのちょっと、嬉しかった。大して可愛いわけでも気が利くわけでもないのに、あたしを評価してくれたことが嬉しかった。
そう言われた友希は曖昧に笑って誤魔化している。まぁ、仕方がないよね。だってまだ彼女と付き合ってて、あたしはまだただの女友達だもの。

「美羽」

そっと隣に腰掛ける。肩が触れ合うくらいに近くに、心なしか体温まで伝わってくるみたい。

「…後悔してる?」

少し不安げにそう聞いてくる。あたしはゆっくり首を振って笑う。

「してないよ」

ぎゅ…とゆっくり、でもしっかりと抱きしめる。トクントクンとかすかに心臓の音が聞こえる。
--あぁ、あったかい…気持ちいい…
ずっとこのまま、こうしていたいとすら思う。

「…今からちゃんと別れてくるから。遅くなってごめん」

かすかに震えていた。

「とも--」
「ごめん、あとちょっとだけ…」

強がりで意地っ張りな友希は泣くのを見られるのを嫌がった。だからあたしは顔を見ずに、頭を撫でていた。

「…ごめん、ありがと。行ってくる」

ほんの少し目元が赤かったけど、あたしは知らないふりをする。玄関で見送ってそのまま連絡が来るまでじっと待機。あとになって体が震えてきた。手足の先の感覚が少しずつ失われる。
--こわい。
なんでこんな恋を選んでしまったのだろう。あんなにも人として最低な人を選んでしまったのだろう。きっとこれから先も怯えながら不安になりながら、それでもあの人しかいないんだろう。
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