嘘ツキ彼氏
付き合って日を重ねるごとにどんどん深く、貪欲になっていった。あたしの生活は友希を中心にして回っていた。

「ね、今日は久々に外でデートしよっか?」
「どこに行くの?」
「街の方ぶらぶらしよ」

何度も行ったことのある街並み。どれだけあたしがよく見ていなかったかが今ならわかる。ここ通ったなぁって思ってもそこにあるお店は全然知らなかったり、知ってるお店のすぐ側なのに見たことない景色だったり。友希はよく知っていた。裏道も美味しいカフェも、面白いゲームも品ぞろえのいい店も。全部、初めての体験だった。

「おばちゃん」

友希の行きつけだというラーメン屋でお昼をすることにする。小さなお店だが、雰囲気は悪くなかった。

「おや、いらっしゃい」
「いつものラーメン、2つね」
「はいよ。そっちの子は…前と違う子だね」

ドキンっと胸が痛くなる。

「前の子と別れたのかい?」
「あー…まぁ…」

歯切れ悪く答えると、店主のおばちゃんはあたしをじっと見つめる。何を言っていいかわからず、軽く会釈だけしておいた。

「そうかい…良さそうな子じゃないか」
「うん」
「そんな…」

言葉がうまく出てこない。笑って受け流すので精一杯だった。ただ彼の知り合いから認められた、というのが少し嬉しくて、同時にほっとした。

その日食べたラーメンは話に聞いていた以上に特別に美味しかった。
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