始まりと終わり
2
「今日からこのクラスの担任を務めます、立花裕介です。」
嘘でしょ。
教壇には立花さんが立っていた。
「これから一年間よろしくおねがいします。」
唖然としていた私を置いて、短めのホームルームは終わっていた。
「イケメンじゃない?今年の担任。」
梓(あずさ)が興奮ぎみに話しかけてきた。
「…そうかな。」
イケメンとかそんなのより、
立花さんが担任という事実を受け入れられなかった。
「もう、結香は男見る目ないなぁ。
…よし、結香、こうなったら今年こそは彼氏作るぞー!」
「……。」
どうなったら、今年彼氏作ることに繋がるのやら。
それより、私は立花さんのことが気になっていた。
「今日はもう学校終わりだし。帰ろうよ。
あ、帰りどっか寄ってく?」
梓は幼馴染み。
「あぁ…うん。」
私のことを冷たい、とかいいながらも何だかんだで付き合ってくれる。
「そういえば近くに新しいドーナツ屋さんできたよね?行く?」
食べ物の情報は梓が一番よく知っている。
「うん、行きたい。」
「じゃあ早く行こうよ。」
梓が私を急かした。
私たちが教室を出ようとしたとき、
「綾瀬いるか?綾瀬結香。」
そう私の名前を呼んだのは立花さん、…立花先生だった。
「結香、イケメン先生が呼んでるよ。…何やらかした?」
「…さぁ。」
見当はつく。春休みのこと、だと思う。
それ以外あり得ない。