始まりと終わり
海だった。静かに風が吹いていた。
「海好きなんですか。」
「うん。昔よくここに来てたんだ。
学生だったころね。」
立花さんは独り言みたいに呟いた。
砂浜を二人で歩いた。
「寒くない?」
立花さんは近くの自販機でホットココアを買ってくれた。
海を見ながら砂浜に続いている階段に座った。
「なんで笑ってるの?」
「ココアが意外だなと思って。」
「よく言われる。ココア好きなんだ。」
立花さんは子どもっぽく笑った。
「立花さん、大人っぽいから。」
「俺なんて社会人の世界ではまだまだ大人なんかじゃないよ。
がっかりした?」
そういうところがやっぱり大人だ。
「がっかり、しませんよ。」
「がっかり、と、しませんよ、のあいだの間はなに?」
「特に意味はありませんよ。」
「冷たいなぁ。結香ちゃん。」
「私は誰にでもこんな感じですよ。」
学校の友達には冷めてる、とよく言われる。
さっきより風が強くなってきた。
「これ着て。」
立花さんが立花さんの着ていたジャケットを
私の肩にかけてくれた。