小悪魔執事と恋ゲーム
「怖かった、から……。 本当にありがとう。」
男に気を取られて顔をあまり見ていなかった。
のと、雰囲気がだいぶ変わっていたこともあって
助けたときは気づきもしなかった。
──けど。
この幼くて甘ったるい声。
よく癖で昔から髪を耳にかけるその仕草。
間違い……ない。
今、目の前にいるのは紛れもなく莉愛だ。
莉愛で間違いがない、はずなのに。
違和感を感じさせられていた。
自分の思い通りに男を動かすあの莉愛が、まさか両方の手を交差させながら、震えた身体に巻きつけるなんて……。
普通なら、絶対に考えられないことで。
変わり果てた彼女の姿に、いつまでも俺は動揺を隠せずにいた。