小悪魔執事と恋ゲーム





まさか、お父様専属の久東が迎えに来るなんて思いもしなかった。



放課後になれば、八乙女と話せるんじゃないかって。



どこか期待してたわたしは甘いのかな……。




「……。」




さっきから会話一つない静寂な車内。



緊張の空気ばかり漂わせて、わたしを追い詰めたがる。



これじゃあ、なんだか前に戻ったみたい。



どうしよう……。



本当にこのまま戻ってしまったら。



嫌だ……嫌だ……。



まだ手遅れだと思い込みたくない。



わたしたちは最初から結ばれる運命じゃない、と。



頭では分かっていたけど……。



現実から目を背けたくなる。



掟破りのわたしは恥知らずなお嬢様?



窓ガラスに映る惨めな自分に、思わずため息が零れた。



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