一枚から始まったラブレター
携帯を手に持ったままリビングへ向かう。

階段をかけ下りる音が、寝起きの私の耳によく響いた。
それにまだ視界が微かにボヤけているし。

リビングに入るとお母さんが早々と私に訊ねた。


「けい、今日友達と約束してたんじゃないの?」


「まあ、そうだけど」


「もしかして、昨日のラブレター見てから興奮して眠れなかったとか?」


「そんなんじゃないよ」


約束をすっぽかした私に、飽きれ気味のお母さんがラブレターの話になると、自分のことのようにウキウキしていた。


元に昨日の手紙は、私宛のラブレターじゃなかったみたいだし。
これって、お母さんに誤解を生んだままだよね?


私の思いを他所に、冬にピッタリなインスタントのコンスープを淹れてくれたお母さん。

私はマグカップを持つなり、ふうふうして一口飲んだ。


「あちぃ」

と、私は咄嗟に言葉に出した。
舌がやけどしたように、少しヒリヒリする。

飼っているチワワのくうが心配そうに、私の足元をうろうろしている。



「そんな慌てて飲むからよ」


私はやっぱりお母さんに対して、動揺しているのかも。

何だかお母さんには、私の弱点を突かれてるみたい。
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