雫と光
テツ、と呼ばれた彼は
無言で席を立つ。
高梨哲弥(タカナシ テツヤ)
無口で、クールで、背が高くて、カッコいい。
サークルにしては真面目に活動しているフットサルサークルに入っている。
前ちらっと練習風景が目に入ったのだが、なぜ部活に入らなかったのだろうと思うくらい上手い。
もちろん、一番レベルの高いこの英語クラスにいることに加えて、成績優秀で奨学生にも選らばれているほど頭もいい。
まさに、完璧。
「Perfect! Nice work」(全問正解!よくできました)
ただそんなせいか、近寄りがたい雰囲気を感じる。
「哲弥くん、本当カッコいいよね」
「え?あ、うんっ」
滅多に笑わない、愛想が悪い。
最初の印象はそんな感じだった。
少なくとも、英語のクラスではほとんど喋らない。
女の子ってああいうミステリアスな人に惹かれがちだけど、よくわからない。
なんでなの?
彼のこと、私たち、何も知らないじゃない。
「璃咲、ぼーっとしてどうしちゃったの、席替えだって!」
「あっえっ?席替え?」
今年は1ヶ月ごとに席替えがあると言われていた。高校時代を思い出す。