先生〜ずっと貴方だけ〜
私は少し離れた所にあるトイレへ向かって通話ボタンを押した。
「……もしもし?」
『あ、愛菜?!!』
小春の予想とは大違いだと一瞬でわかる声。
「なに?」
矢野先生。
『なんで朝電話出なかった?』
「知らない番号からの電話なんて簡単に出ないよ。」
『愛菜は…俺の番号消したのか?』
少し震えながら話す先生が内心怖くて仕方がない。
「消した。で何?用件は?」
『そうか、消したんだな…。俺はまだこんなにも好きなのに。
なぁ、愛菜、もう1度やり直さないか?』
「ねぇ、もう本当にやめて?
先生このままだとストーカーになっちゃうよ…私が好きだった先生はそんな人じゃなかった。
それに先生が何回も私を好きだって言ってくれても私は答える気がもうないの。
好きだった事は過去の話になったんだよ。」
そう…確かに私は矢野先生が
好きだった
その気持ちは紛れもなく本物だったよ。
でもそれを壊したのは…先生本人じゃん…。
それから無言の先生。
「…ごめん、じゃぁ切るね」
私が耳から携帯を離した時に聞こえた
すすり泣く先生の声。
電話を切って小春のところへ戻る。
私のアイスは飲み物のようになっていた。
「誰からだった?」
実は小春に矢野先生と昔付き合ってたことは言ってない。
私は意を決して小春に話す事にした。
「……実はね…」
今の電話が矢野先生だった事。
ちょうど今から約四年前に家庭訪問がある先生に道を案内して出会った事。
告白されて付き合った事も。
…矢野先生が他の女の人とキスをしていた事ももちろん話した。
「ほんっとにごめん、黙ってて…」
両手を合わせて謝る。
「なにそれ!!矢野先生、許さない!」
いきなり大きな声で叫ぶ小春。
小春はそんなアホな教師はこっちからゴメンよね!
なんて怒ってくれた。
「愛菜、メールアドレス変えなよ!
矢野先生の携番も着信拒否にしな!」
真剣な目で言ってくれる優しさは私をそっと包み込んでくれるようで…
小春、ありがとね。