【短編】あわよくば、君と。
ムカつく。
こいつには何を言っても届かないのか?
そんなことを思っていたら、自然と
『ばーか、好きだよ』
なんて言葉が溢れていた。
きっとこの言葉だって、冗談にされるんだろうなって思いながら。
『またお得意の冗談ですか』
ほら、案の定だ。
本気だよ。
本気でお前が好きなんだよ。
はあ、なんで伝わらねーかな。
俺が、なんと言おうがあいつにはいつだって冗談にしか思ってもらえない。
くそ、こんなところで日頃の行いを後悔するとは思わなかった。
『キュンときた?』
一度でいいからこいつ、俺のことでドキドキしねーかな。
『冗談なんかにキュンとしてたまるか
私のタイプは誠実な人なんだから』
誠実、な。
俺とはかけ離れてるもんな。
お前は、冗談じゃなかったらきゅんとすんのかよ。
本気で伝えたら、お前はなんて言うんだよ。
『身勝手だな
お前のタイプとか知らねーよ』
『あんたのタイプは?
ていうか好きな子とかいるの?』
お前だよ、ばか。
気づけよ。
マジ、イラつく。
けど、この会話を終わらせるわけにはいかない。
今日は絶対、言うって決めてたから。
『隣にいて楽しいやつ』
こんなに学校に来るのが、席に着くのが楽しかったのなんてお前が初めてだよ。
だから、
『へー、いるんだ』
少しは俺に、興味持てよ。
『こーみえて俺、結構モテんの』
アピールも多分こいつには効かない。
そんなのわかってるけど、少しでもプラスになることならいくらでも言う。
『自慢なら結構でーす、好きな子にでも聞いてもらったら?』
だから、お前に言ってんだろ。
そう言うなら話聞けよ。
『冷凍食品弁当に使わないところ、良いよな』
前に、自分の弁当手作りだって言ってたよな。
いつかあわよくば俺のために、なんてな。夢のまた夢だな。