【短編】あわよくば、君と。

がらにもなく火照った顔を見られないように授業が終わってすぐ廊下に出る。


はあー。

窓から吹き込む風にあたったって熱が冷めることはなく、さっきの言葉に後悔と期待が入り混じる。


仕掛けても、仕掛けても伝わらなくてもどかしい。

最後の言葉だけじゃないだよ。
今日は一度も俺は冗談なんて言ったつもりない。


だけど届かない。
だからいつも冗談交じりの言葉しか言えなくなるんだ。


一ヶ月、たった一ヶ月だけだぞ?

一ヶ月隣にいただけで。

こんなにも、あいつにハマると思わなかった。
こんなにも欲しいと願うなんて思わなかった。


「岩野っ!」


突然、耳に入ってくる俺の名前をまっすぐに呼ぶ、声。
誰かなんて振り返らなくたってわかる。

顔の熱はまだ、ひかない。


「はっきり言え!ばかっ」


「顔、真っ赤……」


顔を真っ赤にして、必死に睨んでくる。


その様子がなんともちぐはぐで、いつもはムカついてばかりのこいつを不覚にも、かわいいと思った。


なあ、ラストチャンスだって思っていいか?


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