【短編】あわよくば、君と。
「だ、誰のせいだと思ってんの!」
いつもと違うこいつに優越感さえ覚える。珍しく、動揺していることを愛おしく思う。
俺の言葉が、届いたんだって思ってもいいのか?
ふっと肩の力を抜いて笑う。
「俺の今日の紙切れ、紙の初めの1文字ずつ続けて順番に読んで」
これが俺の最後の、本当に最後のお前宛のメッセージ。
「え、紙?」
飯田が握りしめてくしゃくしゃになった紙を一枚一枚広げていく。
「えと……あ、わ、よ、く……ば、き、み、と……こ、れ、から、も」
小さな口が動く。
一音一音発されるたび、俺の心拍数も増加する。
伝われ、届け。
お前にだけ、届けばいいから。
「あわよくば、君とこれからも?」
こんな薄っぺらい紙に込めた、俺の想い。
もう、届くことなんてないかと思ってた。