【短編】あわよくば、君と。


たった一ヶ月、されど一ヶ月。

思っていた以上に今まで溜まったメモは増え、けっこうな量の紙を消費した。

岩野からもらった紙を鍵付きの引き出しに保管してあるのは私の秘密。


『あー、俺と離れるの寂しい?』


そう、なに食わぬ顔でこういうこと言ってくるんだ。

でもその言葉にいちいちドキドキしていたら心臓なんて何個あっても足りないから、まともにうけあったりなんてしない。


冗談で誤魔化してばかり。


『はー?あんたなにいってんの』


はーあ、うそだよ。
そんなの寂しいに決まってんじゃん。

席が離れたら一気に接点なくなるもん。
あんたとまだ話したいことがあるんだよ。

なんてとても言えないけど。
気づいてよ、ばーか。


『わざわざ強がんなって、素直になれば?』


ほらまた、そんなこと言いつつもあんたは表情一つ変えない。

ドキドキなんてしようと思ってるつもりないのに、その度私の身体は勝手に反応するっていうのに。

あんたはいつも通り。

だったら私も素直になんてなれないよ。



『誰が強がってんのよ
むしろ授業に集中できて清々するんだから』


勝手に強がる私に、珍しく速攻で返ってくる返信。
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