【短編】あわよくば、君と。
『冗談なんかにキュンとしてたまるか
私のタイプは誠実な人なんだから』
タイプなんか、あてにしないでよ。
好きな人と、タイプは別ものってほんとなんだからね。
あんたはべつに私のタイプも好きな人も興味ないかもしれないけど。
『身勝手だな
お前のタイプとか知らねーよ』
は?身勝手?どっちがよ。
人の気持ち弄びやがって、こいつだっていつか痛い目見れば良いんだ。
少しくらい私に興味持ってくれたっていいじゃん。
『あんたのタイプは?
ていうか好きな子とかいるの?』
あんたは私のこと女としてみてないかもしれないけど、私にだって少しくらい振り向いてよ。
せめてこいつに好きな人なんていなければ、なんて淡い期待を寄せてみる。
『隣にいて楽しいやつ』
なに、それ。
好きな人なんて、いるの?
今までそんな話、一言も聞いたことないのに。
なんて自分で聞いたくせに、勝手に動揺してどうするの。
ああもう。文字が、震える。
紙がまっすぐに切れない。送る紙切れがガタガタに曲がってる。
『へー、いるんだ』
『こーみえて俺、結構モテんの』
知ってるよ、そんなの。
隣のクラスの大和撫子系の美人さんも岩野が好きだって噂で聞いた。
わざわざ言われなくたって、知ってる。