【短編】あわよくば、君と。
『それ私に言ってどうすんのよ』
私に言うくらいならちゃんとその子に好きだって言いなよ。
よく見てるんでしょ、その子のこと。
この紙見れば誰だってわかる。
いつもより丁寧に書かれた文字。
綺麗に切り取られた紙。
行間からは岩野の息づかいすら伝ってくる。
好きな人のこと考えてるときの岩野は私の知らない岩野ばかり。
私は、そんなこと聞きたくない。
身勝手だろうが何だろうが聞きたくないの。
言うなら直接言ってよ。
私を通り越して奥の誰かと話してるなら、もうこんな会話したくない。
『もっとお前のこと知りたいって言ってんだけど、わかんねーの?』
は?
突然、イラついたように渡された紙。
頭が真っ白になって何も考えられなくなる。
なに、言ってんの?
だって、そんなこと今まで一言も……!
焦って隣を見れば、頬杖をついてそっぽ向いてる岩野の姿。
これじゃ、何を思ってるのかわからないじゃん。