幼馴染はどこまでも俺様過保護
「舞美の事覚えてるか?」
「ああ、おまえの従妹だったよな?」
彼女を紹介されたのは大学の時。俺達の学祭に高校生だった彼女が遊びに来て、その時、初めて児島に紹介された。
あの時児島は、彼女を『従妹』とだけ紹介したが、俺が蒼海を大切に思っているように、児島も彼女を大切に思っていると、俺には直に分かった。
「舞美…怪我させられたんだ…」
唇を噛み、悔しそうにする児島。
「………」
児島の震える拳を見れば、事故によるものでは無い事は分かった。
児島の話によると、舞美さんは会社の友達に誘われ合コンに行き、呑めない酒を飲まされ、合コン相手に犯されたと言う。
「舞美はショックで手首を…」
「!?」
「発見が早かったから大事にはならなかったが… 男性恐怖症に… 叔父や従弟でさえ側によると怯えるようになってしまった。勿論俺もダメだった…」
愛する人に触れる事も、側に寄ることも出来ないなんて、どんなに辛いか…
もし…蒼海か同じ目にあったら…
考えるだけで、怒りで頭が可怪しくなる。
「…今はどうしてるんだ?」
「俺のとこにいる」
「お前を受け入れれる様になったのか?」
児島は俺の質問に首を振った。
「俺に恋人がいない事は舞美も知っていたから、それを利用した」
「利用した?」
「舞美が男性恐怖症になってどうしたら良いか必死に考えたよ… そして出した答えがこれだった。俺の心は女なんだって、昔から男が好きだったって、舞美にカミングアウトという手を使った」
「ニューハーフ…て…事に?」
「少しでも舞美の側に居たくて…女装して見舞に行くようにしたんだ。毎日少しずつ…少しずつ距離を縮めて…」
舞美さんの身内は父親と弟だけらしく、自分が女装してでも側にいて、舞美さんを一生守ると決めたらしい。
「舞美は、俺を男だとは見てないけど… でも、俺は幸せだよ」
「お前いい男だな?」
児島は「惚れるなよ!?」と笑った。
俺は児島の目に光る物を見た。だが、幸せだよ、と、言ったのは本心だろう…
いつか児島の想いが報われる事を祈りたい。