幼馴染はどこまでも俺様過保護
澪から聞いたカラオケ店に行き、受け付けで林の名前を伝えたが分からないと言われ、店員の止めるのも聞かず、部屋の扉をひとつづつ開けていく。
「お客様困ります!」
「大丈夫、騒ぎは起こさないから!」
どこだ!?蒼海はどこに居る!?
幾つ目かのドアを開け店員に腕を掴まれた時、トイレから出て来た林を見つけた。
「林!!」
「副社長!?」
林の驚いた顔に店員が、お知り合いですかと聞き、林が頷くと店員はその場を離れていった。
「副社長、どうしてここに?」
「そんな事はどうでも良い!蒼海は何処だ!?」
林はここに居ますよと言って近くのドアを開けた。そこには今まで見たことの無い姿の蒼海が居た。短いスカートから顕になった足、今にも胸がポロリと出そうな服。
なんだその格好は!?
蒼海は呆然と立つ俺に虚ろな目を向ける。
あ…か、可愛い…
「ん〜タレですぅか?キャハハ、タレてもいいれすぅ〜いっひょにのみましゅよ」
(ん?誰ですか?誰でも良いです。一緒に飲みましょよ)
え?俺だと気付いてない?
こいつ既に出来上がってるじゃないか…
「林、蒼海にどれだけ飲ませた!?」
「レストランでも殆ど飲んでないですよ?澪ちゃんに飲ませないように言われてるから…ここでもオレンジジュース…あっ!それ私の!」
蒼海が手に持っていたのは林が頼んだと言うカシスオレンジの入ったグラスだった。
「おの…おれんしゅいれしゅょ…ヒク」
(このオレンジジュース美味しいです)
蒼海はそう言って再びグラスを口へと運ぼうとした。
「蒼海!もう飲むな!帰るぞ!?」
俺はクラスを奪い取り、連れ帰ろうと蒼海に手を伸ばすと、蒼海の隣に座って居た男に邪魔された。
「ちょっと、あんた誰だよ!?勝手に入って来て困るな!蒼海ちゃんは俺達と楽しくやってるんだから、出て行けよ!?」
はぁ!?蒼海ちゃんだ!?誰の許可を得て蒼海の名前呼んでるんだよ!?
「ちょっと杉本さんやめて!彼女を帰してあげて!副社長、すいません。城之内さん、ほら、副社長が迎えに来てくれたよ?」
林が蒼海を立たせようとするが、蒼海は立つ事が出来ないようだ。
俺は着ていた上着を脱ぎ蒼海に着せると、まだ遊ぶ帰らないと駄々を捏ねる蒼海を肩に担ぎ上げた。
「林、蒼海の鞄」
林は蒼海の鞄を持って、表まで送ると言ってドアを開けてくれた。