幼馴染はどこまでも俺様過保護
「ヤダ!こんな缶詰状態なんて嫌だよ!窒息死しちゃう!」
私はここに缶詰状態になって既に一週間が過ぎていた。
「蒼海(アミ)ちゃん、頑張って作って?澪(ミオ)のお願い」
両手を合わせ瞳を潤ませ必死にお願いする澪ちゃん。
「澪ちゃん…」
澪ちゃんにそんなふうに頼まれたら断れないじゃない…
私は肩を落とし項垂れる。
「諦めたらさっさと再開しろ!」
冷たく言い放つこの男は、幼友達の桜小路隼翔(サクラコウジハヤト)31歳。そして澪ちゃんは隼翔の妹で19歳、子供の頃から雑誌モデルをしていて、今やティーンから人気のファッションモデル。
隼翔と澪ちゃんは一回り歳が離れている為、隼翔は澪ちゃんを小さな頃からとても可愛がっている。だが、彼らは血は繋がっていない。彼らの両親は再婚で、隼翔が高校1年の時、澪ちゃんはお母さんと一緒に桜小路家の籍に入ったのだ。
初め思春期だった隼翔は戸惑い、父親へ反発もし澪ちゃん達親子を受け入れていなかったが、あどけない笑顔を向ける澪ちゃんに、隼翔も日に日に心を緩し可愛がる様になっていった。今では父親以上に厳しく甘い兄になっている。
「ケーキ…」
「なに?聞こえない」
冷たく聞こえるように言えという隼翔。
「ケーキが食べたい!プチモアのケーキが食べたい!プチモアのフルーツケーキが食べたい!食べたい!食べたいー!!」
聞こえるように言えと言う隼翔に私は大きな声で言ってやる。
「煩い!お前はガキか!?仕方ないなぁ少し息抜きに連れて行ってやるよ!帰って来たら大人しく続きしろよ?」
うんうん!やるやる!と満面の笑顔で私は返事をし、隼翔の運転する車で出かける事になった。