幼馴染はどこまでも俺様過保護
井上様宅に伺い、お食事を頂いた後、一番の目的で有る着物を見せて頂く為に座敷へ案内して頂いた。
「素敵なお着物ですね」
座敷の衣桁(いこう)に掛けられた振り袖は、それはそれは美しく、豪華絢爛と言う言葉そのもので、花と御所車が描かれた華やかな着物だった。
「素敵でしょう?次期国宝と呼ばれる方に描いて頂いたのよ」
それはそれはお高い事でしょ?
私には着物の価値はわかりませんが…
「お写真を撮らせてもらっても宜しいですか?」
「ええ、勿論よ」
写真を撮らせて貰った後、井上様の娘さんにお茶をだして頂いた。
「母と一緒に焼いたんですけど、宜しかったらどうぞ」
りんごをばらの花に形作り飾付けしたアップルパイ。
「可愛いアップルパイ、美味しそう。いただきます」
「どうかしら?」
心配そうに私の食べるのを待っている娘さん。
「とても美味しいです」
私の感想を聞いて、良かったと親子で喜んでいる井上様を見ていると羨ましくなる。こんな母娘を私も夢見ていた時期がある。
「仲が宜しいんですね?羨ましいですわ」
「ひとり娘で大事に育て過ぎて少し我儘に育ってしまって困ってるんですけどね?ウフフ…でも実の娘ですから可愛くて…城之内さん御兄弟は?」
「いえ、私もひとりです」
「そう?じゃ、親御さんはあなたがお嫁に行くと寂しがるわね?特に男親は大変よ?」
「……」
「ママ、私はお婿さんを貰うから心配しないでね?」
「あらあら、我儘なあなたのお婿さんに来てくれ人が居ると良いですけど?」
母と娘の何気ない会話は母の居ない私にはとても辛い会話だった。
「それでは、私はこれで失礼をいたします。今夜は美味しいお食事を頂いたうえ、目の保養までさせて頂き有難う御座いました。また、なにか御座いましたら、ご連絡くださいませ」
「ええ、今日はわざわざ来て頂いて、申し訳なかったですね?miu-la-umiさんの髪飾りの件よろしくお願いしますと桜小路さんにお伝えして下さい」
「…はい。桜小路に申し伝えます」