幼馴染はどこまでも俺様過保護
自宅に戻り井上様の着物をスマホで確認する。
「はぁ…どうするのよ…」
こんな立派な着物に私の物など合わせられないよ…
何度見ても出て来るのは溜息ばかり。そんな時スマホが震えた。
澪ちゃん…
「もしもし」
『蒼海ちゃん今家?お母さんに聞いたけど、今日、お得意様のお宅に行って来たんでしょ?』
「うん、さっき帰って来たとこ」
『そっか…ごめんね?私のせいでこんな事になって…さっきもお母さんに紹介しなさいって言われたんだけど、企業秘密なんて言って誤魔化したけどさ?でも、どうする?』
「うん…澪ちゃんも隠し通すの大変だよね…」
『私は大丈夫だよ?蒼海ちゃんが言わないでって言えば私は誰にも言わない』
「ありがとう…」
でも、そうなると隼翔は井上様の御祝いが出来なくなる。会社として井上様のご機嫌を損なう事は出来ない。
「もう少し考えてみる…澪ちゃんにも心配掛けてごめんね?」
隼翔がインドから帰って来るまで、まだ時間はある。なにか方法が無いか考えよう。
『ところで、蒼海ちゃんなにか困ってること有る?』
「え?どうして?隼翔が何か言ってたの?」
『ううん、お兄ちゃんは何も。むしろ一言も言わずに出掛けて気味が悪かったくらい。いつもなら、俺が居なくても羽目を外すなとか、男友達と出掛けるなとか言うのにさ、電話も無いんだよ?おかしくない?そりゃー私はうざく無くて良いけどね、でも蒼海ちゃんの事も何も言わずに出掛けるなんて今迄無かったから』
いつもなら必ず電話して来るのに今回は一度も電話して来ない。仕事の事も全てメールでのやり取り…
やっぱり怒ってるんだよね…このまま私達の関係も崩れていくのかな…
『…もし何か困った事があったら言ってね?いつでも相談にのるからね?澪は蒼海ちゃんの見方だからね?』
「ありがとう」