幼馴染はどこまでも俺様過保護

「そうですね…皆んな頑張ってくれてますから特には無いですね?強いて言えばお得意様への礼状や招待状の宛名書きですかね?」

うちの会社は社長の意向でお得意様へお出しする手紙の宛名書きは全て手書きにしている。礼状や招待状の他に年賀状においても勿論宛名書きは手書きで、年賀のご挨拶文は印刷ではあるが、担当者からの一言も手書きで添える事になっている。

「そうね?あれは大変よね?」

今の御時世手書きで送っている会社は少ないだろう?まして今は印刷機も良く毛筆と変わらない出来栄えの物がある。社員からは11月になると毎年クレームの嵐になるのだが、お客様からは、心温まるとお褒めの言葉を頂き、担当者の売上にも繋がっていると思う。

「蒼海ちゃんのプライベートではどうかしら?」

「私のプライベート…ですか?」

「なにか困ってる事ない?」

おば様まで私の事こんなに気に掛けてくれて有り難いが、申し訳ないという気持ちのほうが強い。

「ご心配頂いて有難うございます。でも、何も困ってる事はありませんから」

「そう?それなら良いけど、何かあったら相談してね?私は蒼海ちゃんの事娘だと思ってるんですからね?」

はい。と、笑顔で答えた。

社長室を出た後、給湯室で事務所にいるであろう人達にコーヒーを入れて行く。

「山下さん、コーヒーです。ミルクだけで良かったですよね?」

「はい。有難うございます」

隼翔との電話はどうなったなだろう…

隼翔は私の事、まだ怒っていたのだろうか?

いや、怒っていたとしてもそれを他の関係ない人にベラベラ喋る男ではない。ましてや自分の会社の従業員に話すような話ではない。

「やっぱり無理だと言われました…」

え?

不意に告げられた言葉に、思わず発した人をガン見した。

「今回はmiu.la.umiが何処の誰だか分からない状態で引き受ける事は出来ないから、丁重にお断りしろと言われました」

「そ、そう?」良かった…

「それから城之内さんに副社長から伝言です。『頼んで有る事頼む』と言ってましたよ?どうして伝言なんですか?直接話せばいいのに?」

「うん、そうだよね?どうしたのかな?さぁー仕事仕事」

皆んなに心配掛けたくなくとも既に心配してるようだ…

隼翔が帰って来たら早く謝っちゃおう!仕事に支障をきたすとマズイからね。





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