幼馴染はどこまでも俺様過保護

給料日。普通なら待ちに待った日と言って、朝からテンションも上がるだろう。でも、半年前から私にとって、嬉しくも楽しくもない日になったのだ。

お昼休みになり、パートの匙さんに外出する旨を告げ事務所を出る。エレベーターのボタンを押そうとした時ちょうどエレベーターが到着し、林さんが降りて来た。

「あれ?出かけるんですか?」

「うん!給料日だから」と笑ってそのエレベーターに乗り込む。

私の給料日だからと言う言葉を林さんは良い様にとっただろう。『給料日だから、美味しいものを食べに行くのかな?』『給料日だから、いつもよりリッチなお弁当買いに行くのかな?』そんなふうに普通は思うだろう。

でも、実際の私は違う。他人にお金を渡しに行くのだ。私に借金も、義務も責任も無いのに、毎月、返されることの無いお金を私は届けに行く。

会社から少し離れた所ある、通りから少し中へ入った小さな喫茶店の扉を引く。するとカランカランとどこか懐かしいドアベルの音がして、中から「いらっしゃいませ」と年配のおばさんが迎えてくれる。

私は店の中を見渡す。すると奥の席で手を振る女を見つける。私は顔を顰めひとつため息をついて、その女の元まで行き向に座る。

「ご注文は?」と迎えてくれたおばさんが、お水とおしぼりをテーブルに置いてくれる。私は「紅茶お願いします」と注文する。おばさんは「はい」と言ってその場を離れていった。

「持って来てくれた?」





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