幼馴染はどこまでも俺様過保護
女の申し出をキッパリ断った。しかし、断ったのは私ではない。隼翔が断ったのだ。
「はぉ!?他人のあんたは関係ないでしょ!?勝手に話に入って来ないでよ!?」
「他人なのはあなたも同じですよね?和也君も蒼海とは他人だ。まだ、戸籍上は城之内だが、いま法的措置をとっているはずです」
隼翔…皆んな知ってるの?いつから知ってたの?
「とにかく今後蒼海には近寄らないで下さい。勿論、和也君にも蒼海には近づかないように行っといて下さい。もし、守っていただかなければ、こちらもそれなりの措置を取らせて頂きますので!」
綺麗につくられた女の顔が醜く崩れていく。まさかこんな事になるとは女も思っていなかったのだろう。私ひとりなら容易くねじ伏せれるだろうが、隼翔が相手ではそうはいかない。
「それなりってどういう事よ!?」
「和也君もまだ未成年ですからね?こちらもあまり騒ぎ立てたくはないですが、そちらの出方によっては訴える事もあるという事です」
「……フン!やれるならやれば良いわ!」
女はデーフルの上の現金の入った封筒を手に立ち上がろうとしたが、それを隼翔に奪い取られた。
「これは置いていって貰います」
女は隼翔を睨み「このままじゃ終わらないわよ!?覚えてなさい!!」と捨て台詞を言って帰って行った。
「隼翔、あのね」
私は隼翔に謝りたかった。私の事を怒っている隼翔に早く謝りたかった。そして助けてくれたことのお礼も言いたかった。だが、隼翔は何も聞かないと言わんばかりに席を立って行った。
「隼翔、待って!」
私はテーブルの上に置かれた封筒を鞄にしまい、隼翔の後を追う。
「ねぇ隼翔待って!話を聞いてよ!」
身長差30cmもある隼翔とはコンパスの長さが違い過ぎる。私は追いつくのがやっとで、足早に歩く隼翔に私は小走りになってしまう。やっと、隼翔が止まってくれたと思ったら、そこは会社の前。
「お前、休憩時間終わるんじゃないのか?」
隼翔に言われて腕時計を見ると、休憩時間は後5分もない。あっだから隼翔は急いで歩いたんだ。
「話なら仕事が終わってから聞く」
隼翔はそう言って1階の店舗へと入っていった。