病室の甘い悪魔




いっつも空き病室で窓の外を眺めている彼と初めて出会ったのは、真夜中のこと





その日は体調もよくて、悪いことと知りながらも病室を抜け出していた私は、面白いことを探していた





なんてったって、ここは病院。

幽霊に出会えるかもしれない!





しんと静まり返った廊下を歩いていると、最奥の病室からなにやら物音。私は興奮と期待のままにドアをぶつかるようにして開け、月明かりのさす病室に飛び込んだ








中には、こちらに背を向けたひとりの少年






そしてその周りには、何本も、







人間のウデが、おちて、いた。







目を見開き息を呑むも、本当に人間のものどうかは怪しいしそんな些細な感情に私の好奇心は止められない!!




『ね、ねぇ…!』





歩み寄ろうとすると、少年は私に背を向けたまま言った






「だめだよ、きちゃ。」





思わず足をとめる






言われたからじゃない





この私と同年代くらいの少年には、近づかない方がいいと本能が叫んでいるから







『あ、の...。』






「ほらはやく病室に戻って。巡回の時間だよ」






その背中は私を早く行けとせきたてているように思えた







しかたがない





くるりと私は踵を返し歩き出そうとする






すると、後方から声が飛んできた







「あした、同じ時間に、この場所で。」





私は小さく頷いて、歩き出した






本能は、もう危険を叫んではいなかった












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