下町コインランドリー





それから、高村さんとはほぼ毎日会いました。




洗濯が終わるまでの数十分の間、他愛もない話をしました。








その間に高村さんのことについて分かったのは29歳だということ、喫煙者だということ、サラリーマンではないということ、近所にすんでいるということ、最近彼女と別れたということ。




逆に言うと、もう何日も話しているのに、これしか知りません。




高村さんはあまり自分のことをペラペラと話すような人ではないのです。




「高村さん!!!!」




私の給料日まであと少しになった今日も、高村さんはタバコを吸っています。




「おー、鈴ちゃん、おかえり」




その言葉に私はただいまと答えて、洗濯機に洗濯物を放り投げます。




今日もいつもと同じように高村さんとお話をしよう。




そう思って、外で立っている高村さんのもとへ走ります。




「たっかむーらさんっ!うおっ!!!!」




少しうつむく高村さんにそう声をかけると、ぐっと手を引かれました。




気がつけば、高村さんの腕の中。






「……高村さん?」





「……………」





高村さんは黙っています。少し震えています。






大丈夫ですよ、と言うように、私はそっと大きな背中に手を回しました。




そうすると、高村さんの腕にぐっと力が入ります。





「なにか、あったんですか?」




答えは帰ってきません。




ただ、二人の呼吸が白くなって空に上って





満月だけが二人を見つめています。





















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