下町コインランドリー





高村さんはなにも話さず、ただ私を抱き締めます。




「高村さん、今日は満月だから甘えたい気分なんですか?」



私はいつもとにこにことした笑顔が見たくて、少し冗談めいてそんなことを言いました。



甘えても、恥ずかしくないんだよ。今日は満月なんだから。



そう、伝えたかったのです。






「いい歳したおっさんが……」





突然耳元で聞こえた、低い声



少しだけくすぐったくて、少しだけ耳が熱くなります







「10歳も歳の離れた子に甘えても許されんのかな」




弱々しくそういう高村さんに、なんだか胸がぎゅっとなって、




「甘えるのに歳なんて関係ありませんよ。何歳になったって寂しくなるし、不安になるし、人肌が恋しくなるでしょう?それに、もし神様が許してくれなくても今日は満月だから目をつぶってくれるかもしれませんよ。」




そんなことをいいながら、よしよしと高村さんの頭を撫でてあげます。





「満月、か」




高村さんは少しだけ微笑んで、私を抱き締めたままほんの少し前の話をしてくれました。






「あいつと……別れた日も満月だったんだ」



























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