下町コインランドリー
「あいつとは大学の頃から付き合ってて、もうそろそろ結婚しようか、なんて勝手に考えてた。でも、あいつは違ってて………」
職場の先輩に付き合ってもらって婚約指輪を選んで帰った日
家に高村さんの元カノさんの姿はなくて、ただ1枚手紙が残されていたそうです。
『あなたとは、もう一緒にいられません。さようなら』
突然のことに高村さんはどうすることも出来なかったそうです。
昨日までは普通にあった幸せがすり抜けていく感覚
それに耐えられなくて、誰とも連絡をとらず、仕事もやめて、元カノさんに関するものは全て絶ったそうです。
「段々と、あいつのことを過去にできてきてると思ってた。そう思いたかった。でも、情けないことにたった1回の連絡で全てが崩れ落ちた。弱くなった。」
声が震えてる高村さんに気づかないふりをして、私はただ耳を傾ける。
「県外の実家に帰るから、きっともう偶然にも会えないだろうって、今までありがとうって、ごめんなさいって……………」
私は思いました。
高村さんは、ずっと元カノさんのことが好きだったんだと。
ずっとずっと、泣きたかったんだなと。寂しかったんだなと。
「飯も、掃除も、洗濯も、ずっとあいつと一緒だった。またあの日々が戻ってくるんじゃないかって、どこかで期待してたんだ。」
私が高村さんのことを考えて過ごしている時間を、きっと高村さんは元カノさんのことを考えて過ごしていた。
あれ、私ってそんなに高村さんのこと考えてたかな?
ううん。きっと、出会った日から、ずっと考えてた。
そうか、私高村さんが好きなんだ。
元カノさんを想い泣く高村さんの腕の中で、私は高村さんへの気持ちに気づきました。