ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
「あっ、そうだ」
あきくんはわたしの頭から手を離し、いつも彼のカバンを置いているスペースのところに向かった。そこにはビニール袋があり、その中から赤いリボンでラッピングされた箱を取り出した。
「これ、そんなにいいものじゃないかもしれないけど」
彼からラッピングされた箱を受け取る。赤いリボンを解き、箱をゆっくりと開けた。
その中にはピンク色のデザインのチューブ。
「これはハンドクリーム?」
「そうだよ」
ハンドクリームを手に取り、表と裏のデザインを見る。何の香りだろう?
「ちょっとつけてみる?」
あきくんはそう言い、わたしからハンドクリームを取った。フタをクルクルと開け、チューブを少し押し、わたしの手の甲にクリームを少しのせた。
わたしは手の甲にのせられたクリームを手の全体に広げていく。優しい香りがふわっと心を癒す。
「それね、桜の香りなんだよ」
ハンドクリームに包まれた手を自分の鼻に近づける。確かに桜の香りがする。