ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
「前、あゆさんはおれが桜みたいな存在って言ったでしょ」
前、桜を一緒に見に行った時にそんなこと言った気がする。
「きっと、それはおれも一緒。あゆさんと一緒にいたら楽しいし、癒されるんだよ」
あきくんはいつもの笑顔をわたしに向ける。このあきくんスマイルにわたしは何度癒されただろう。
わたしはあきくんみたいに癒せる女ではない。自分でそう思うし、周りにも癒し系なんて言われたことない。
でも、言われると嬉しい。わたしは身体以外でも人の役に立つんだなって。
「あゆさん、お誕生日おめでとう」
わたしの両手があきくんの手に包まれた。そのまま手は彼の顔に引っ張られる。
「いい匂い。良かった」
あきくんの手は本当にいつも温かい。ポカポカした気持ちになる。
「あきくん」
あきくんの手から逃げて背中に手をまわした。ギュッとジャージを掴む。
なんでだろう、とても抱きつきたくなった。なんだか甘えたくなった。