ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
──あゆ、頼む、俺といたいならそうしてくれ。
ふと、アノ人の声が蘇る。
カランと音を立ててスプーンがわたしの手からテーブルの上に落ちた。スプーンがなくなった手はお腹あたりの服を掴んでいた。
「あゆさんどうしたの?お腹痛いの?」
オムライスを口に運んでいた手を止めて心配した表情でわたしを見る。その表情は一瞬だけわたしを現実に戻した。でも、また再び過去の記憶へと意識が移る。
──嫁とは上手くいってないんだ。
アノ人の言葉がポツポツと出てくる。やめて欲しい。やだやだやだ、思い出したくない。
ヒデキさんと一緒にいる女の子を見ているとなんとも言えない罪悪感と後悔に包まれる。
「あゆさん」
声がする方に顔を向ける。いつの間にかあきくんは立ち上がってわたしの右側に立っていた。お腹の服を掴んでいた手をそっと握ってわたしを見下ろしてる。
「今日はもう帰ろっか」
手を少し強引に引っ張られた。その勢いでわたしも思わず立ち上がる。