ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
「あきくんね、よろしくね」
すごく人懐っこい子だな。
特別大きな悩みとかなさそう。
羨ましい、わたしもこういう人を癒せる女になりたかった。
次々とみんな自己紹介していく。
中には介護施設で働きながら資格を取りに来ている人もいる。
もしかして、この男の子……あきくんもそうなんだろうか。
今日初めて会ったあきくんに興味深々な自分に気づいて、思わず笑ってしまう。
「どうしたんですか?」
またもや小声であきくんが言う。
「いや、あきくんに興味深々な自分がおかしくてね」
男の人といると、自分から壁を作ってしまう。
信用するのも、嘘つかれるのも、しんどいから。
カオルの名字を知らないでいいって思う気持ちも、多分そこから来てる。
それが、年下っていうだけで、こんなにも警戒心がなくなるものなのか。
「俺もあゆさんに興味深々ですよ。仲良くしたいです」
このあきくんスマイルには本当に癒される。
自己紹介が終わったあと、講義スケジュールをシラバスを使って説明。
明日から少しずつ実技練習が入ってくるらしい。
はあ、大変そうだな。
チラッと横を見る。
まっ、いっか。
明日もこの癒し系あきくんに会えるのだから。
わたし弟いないけど、もし弟がいたらこんな感じなのかな。