ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
「あとは相澤から聞いてください。お姉さんが相澤のことどう思ってるか分からないけど、相澤いいやつなんで」
頭を少し下げて男の子は席を離れた。
ドキドキする。もともとあきくんのことがあって食欲がなかったのが、さらにさっきの聞いて胸がいっぱい。さらに食べる気にならなくなる。
でも、頼んだものは食べないと。箸をたくさん入れている筒から箸を1膳取り出し、目の前の牛丼に箸の先を付けた。
男の子の話を聞く限り、あきくんは今日帰ってきた時、本当は何かを言いたかったはずだ。そんな時に家にいた時にカオルとわたしを見てしまったから──。
ごめんなさい。許してあきくん。
あきくんに会いたい。
会って、あきくんからの言葉が聞きたい。いや、その前にわたしが伝えたい。あきくんへの気持ち。
怖がっちゃダメ。わたしは全てを失って、自信も誰かを想うことも1度は捨てた。だからこそ、今度は捨てたらダメだ。
牛丼はあっという間に食べていた。でも、考え事をしていたから味わって食べたわけじゃない。
お金を払って、外に出た。
空を見ると星がいくつか輝いていた。冬の夜空には負けてしまうけどキラキラと輝いている。
スマホを見てもやっぱりあきくんからの連絡はない。でも、荷物とかは家にあるんだ。それにさすがに明日は仕事。きっと帰ってくる。
『あきくん、伝えたいことがあります。明日遅番なのでそれまであきくんの帰りを待っています』
メッセージを入力して送信した。
もしかしたら実家にいるのかな。焦らず待とう。
早く会いたいけど、帰ってくるのを待とう。
わたしも家に帰らないと。