ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
「あゆさん以外の人に久しぶりに触れた。快楽はあったし、ちゃんと最後まで出来たけど、やっぱりあゆさんに触れている時の方が気持ち良かった、幸せな気持ちになれる」
あきくんに抱きしめられると安心できる。癒してくれる。
「おれもあゆさんが好き。ずっと、この言葉を伝えたかった」
牛丼屋の男の子を思い出す。あの子が言っていたことはこのことなんだろうな。
「ごめん、おれ、まだあゆさんと一緒にいたい」
勝手に自分の口角が上がったのが分かった。気持ちを伝えれて良かった。あきくんの気持ちが聞けて良かった。
こんなに幸福感を感じている。満たされている。
こんなに満たされた感情を抱けたのはいつぶりだろう。自信をなくして、逃げていた時には絶対に持てなかった感情だ。
人を好きになるのはとてもしんどいこと。辛いことも多いし、嫉妬もするし、泣くことだってある。
恋愛は手料理のように難しい。材料を腐らせてしまうこともあるし、思った通りの味にならない時だってある。
だけど、インスタント食品にはない美味しさと温かみがある。簡単な身体だけの関係がインスタント食品で、恋愛が手料理だとしたらやっぱり手料理には勝てないんだ。
「うん、わたしもだよ。傍にいて」
やっと、わたしたち、前に進めたね。
これからも一緒にいて。傍にいて──。