ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
身体を離した後、向かい合って目を合わせた。自然とお互いの口角が上がった。
同じ空間で笑い合える、そんな当たり前のことがこんなに幸せだなんて。
これからわたしも仕事、あきくんもきっと仕事。
帰ってくる場所は同じ。この家だ。
春限定だったはずのわたしたちの関係はまだまだ続く。
「あきくん」
「ん?」
「あきくんはね、やっぱりわたしにとっての桜だよ。癒しをくれる。年中咲いている桜」
カバンからいつもつけているハンドクリームを取り出す。自分の手の甲に少し出したあと、あきくんの手の甲にものせた。
「桜はわたしたちのキューピットだね」
お互いハンドクリームを塗った手の匂いを嗅ぎあった。あきくんはわたしの手の甲に鼻をくっつけたあと、唇をそっと当てた。
「これからもよろしくね、あゆさん」
「こちらこそ。よろしくね、あきくん」
あきくんの手の甲にわたしも唇を当てた。
これからも一緒に。
未来へと歩いていきたい。前に進みたい。
あきくんとなら、きっと、できるはず──。