ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
「分かった、就職するまでならいいよ」
あんな表情見たらほっとけないよ、あきくんは母性本能を刺激する何かがあるのかな。
さっきまで少し悲しそうな目をしていたのに、ぱあっと嬉しそうに目が孤を描く。
「ありがとうございます!本当に就職するまででいいので!」
カオルには1ヵ月親戚が泊まるとか嘘をついて、泊めさせなきゃいいか。
ヒデキさんは家に来ることがないから関係ないし。
「あっ、そう言えばあゆさんって彼氏いるんですか?」
思い出したように、彼は言う。
「いないよ」
そう、"彼氏"はいない。
「良かった。あゆさんにもし彼氏いたらどうしようかと思いました。流石に彼氏持ちの女の人の家に住み着くわけにはいかないので」
あきくんは頭の後ろに手を置いた。
やっぱりあれはあきくんの癖だ。
「わたし本当に彼氏らしい彼氏は2年くらいいないよ」
アノ人を彼氏と言ってはいけない気がする。
アノ人にとってのわたしは、今のわたしで言うとカオルやヒデキさんみたいな存在だったのだから。