ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
共同生活のはじまり
*
──あゆ、頼む、俺といたいならそうしてくれ。
両手を合わせて必死に懇願する彼。
選択肢は1つしかなかった。
全てが狂った。
──アノ人の声。
遠い意識の中、肩を揺らされる感覚。
「……さん、あゆさん」
「ん~」
急に光が目元に差し込み、重たい瞼がパッと開いた。ガタンゴトンと電車の音が耳に入る。
「あゆさん、おはようございます」
聞いたことある声、見覚えのある顔。
「……おはよ、あきくん」
寝起きで大きな声が出ない。
目の前にあるのは癒しのあきくんスマイル。朝日も手伝っていつも以上に彼の笑顔が輝いている。
カーテンを開けたのはあきくんか。
窓に沿って配置されたベッドなのに、彼はどうやってカーテンを開けたのだろうか。
多分わたしの身体を跨がないと開けれない。
人が泊まりに来た時のために一応もう一つ布団がクローゼットに入っていて、あきくんは床に布団を敷いて寝ている。
その布団は今、綺麗に畳まれて部屋の隅に置いてある。