ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
この1週間、カオルとヒデキさんに1回ずつ会った。カオルはこの前と同じで昼間にわたしの家に来て、ヒデキさんとはホテルで会った。
もちろんあきくんには内緒で。
ご飯を作るのは彼だから、ご飯がいらない時は“友達とご飯行く“とか“前の職場の人と遊びに行ってくる“とか、デタラメなことを言ってごまかしている。
あきくんには知られたくない。
純粋なあきくんはわたしがまさかこんなことをしてるだなんて全く考えていないと思う。わたしはそのイメージを崩したくない。
「あゆさん、行こう。着いたよ」
電車の扉が左右に開いていた。
いけない、もう着いたんだ。色々考えてたから気づかなかった。
ボーッとしていたからだろう。あきくんに手を引かれて電車を降りた。
「あゆさんって、ボーッとしてる時多いよね。おれがいないとダメだね」
ははっ、と笑いながらわたしの手を握っていた彼の手が離れる。
あきくんの笑顔を見るたびに思う。
わたしもこんな風に誰かを癒せる女になりたかった。そしたらまた人生違ったかもしれない。