ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
ドアが閉まると車はすぐに走り出した。
さて、帰ろうかな。
自分の家の方向に視線を向ける。
──目の前にいた人と目が合う。
「あっ……」
目が合った瞬間、気まずそうに視線を逸らした。わたしの頭も真っ白になる。
さっきのキスを見られた。
今のわたしにとって、一番知られたくない相手だった。
「……あきくん、バイト終わったんだね。お疲れ様」
目の前にいるのはあきくん。
いつもとは違う少し引きつった笑顔でわたしを見る。
「あゆさんも今帰りなんだね。一緒に帰ろうか」
ヒデキさんと桜を見て、雪でも降るんじゃないかと思った。こんなことになるなら雪が降ってくれた方が何倍もマシだった。
あきくんはさっきのを見て何を思ったんだろう。