ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
わたしにとってはあきくんの笑顔が何よりも癒し。ひねくれた心が解かれるような感覚になる。
「あきくんはわたしにとって桜みたいな存在だよ」
春に出会って、一緒に住んだ。でも、この関係は春で終わってしまう。期間限定の関係。
「あきくんの笑顔にわたしはすごく癒されているよ。いつも笑顔でいてくれてありがとう」
こうしたことを面と向かって言うのは初めてかもしれない。でも、ずっと思っていたこと。
笑顔が素敵だからこそ、“前に進めない“と言っていた時に見た不安そうな顔が頭にこびりついて、そんな表情させたくないって思った。
わたしに出来ることは1つしかない、練習台になること。
あきくんは頭の後ろに置いていた手を顔に持ってきて覆った。少し俯く。
「あゆさん」
「何?」
「そんなこと言われたら恥ずかしい」
これはもしかして照れている?
本当に本当に可愛いんだから。
「あきくん、手を顔から離してよ」
「やだやだ。今は顔赤い」
「えー、いいじゃん。可愛いんだから」
今が今年で1番綺麗な桜を見れる時期。
次もし見ることがあっても、もうこれ以上素敵な桜は見れないだろう。
あきくんとの不思議な関係が終わるころには、この桜たちも散ってしまうんだろう。
わたしたちはそれまでに前に進めるのだろうか──?