ワケありオンナとワケあり男子の共同生活


あきくんは少し遅れて就職した。多分まだ1週間ちょっと。

わたしはあきくんの言葉に首を横に振る。

「まだ慣れない。なんかね、講習では利用者さんとしっかり向き合ってって勉強したけど、実際それをしようと思っても出来ない。業務に追われて、なかなか1人1人と向き合えない」

講習で勉強したことと現場が違う。わたしがまだ早く仕事出来ないから余計になんだろうけど余裕がない。

「おれもね、介護施設じゃなくて病院だから当たり前だけど講習で習ったことと違うから戸惑ってる」

就職してまだ1週間のあきくんは余計にしんどいかもしれない。

病院は"利用者"ではなく"患者"と呼ぶし、介護士は日常生活の介助に対して看護助手は看護師の手伝い。シーツ交換や入浴介助と表向きすることは似てるかもしれないけど、病院と施設ではやっぱり色々と違う。

あきくんの仕事の話を聞いて、そう思う。

就職したばかりのわたしたちは悩みが尽きない。こうして夕食で話すことで、お互い次の日頑張ろうって思えるんだと思う。


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