rabbit vanira
「どうしたの?」
そう言って宇佐木さんは、1番左側のブラン
コに腰掛ける。
きっと私の事を気にかけてだろう。
「早く起きすぎてしまって…」
「あるよね、そういうの。」
「はい。」
「この間は、ごめんね。」
「え…?」
「学校案内のとき。」
「あ、いえ…こちらこそ、すみません。」
「…」
「…」
「俺ね。いっつもあの部屋に居たんだ。」
あの部屋、というのはきっと調理室の事だ
ろう。
黙って頷く。
「でね、そこでさ、とんでもなく面白い奴に
会ってさ。初めてあった時から、お菓子作
りしてた。」
「…」
私は何も言わずに黙って聞いてることにし
た。
「そんで、そいつが作ってたケーキがすっげ
ーうまくって、感動した。それから、授業
抜け出しては、そいつの居る調理室に行っ
て、話したり、お菓子食ったり、一緒に作
ったり…めっちゃ楽しかった。で、将来は二
人とも、『パティシエになろう』って言っ
てた。でもまぁ、俺は下手くそだったけ
ど。」
「楽しかったんですね。」
「うん。でさ、そいつずっと言ってたん
だ。『可愛くて仕方ない妹がいる。だから
妹が喜ぶものが作りたい』って。全く、シ
スコンだよなー」
その人の事を楽しそうに話す宇佐木さん。
笑った横顔があどけなくって、見とれてし
まう。
これがイケメンの特権だろうか。
「それで、その人とは?」
すると、少し悲しそうな顔になる。
「大学入る前にいなくなった。ある日ぱった
りいなくなったからね。もうずっと会って
ない。音信不通、ってやつ?」
「寂しく、ないですか?」
「んー。寂しくない、って言ったら嘘だけ
ど、きっとあいつの事だから、今頃楽しく
やってそうな気がする。」
風がふく。
「羽咲ちゃん」
いきなり名前で呼ばれて、ドキッとする。
「羽咲ちゃんは、会いたい人はいないの?」
そう言って宇佐木さんは、1番左側のブラン
コに腰掛ける。
きっと私の事を気にかけてだろう。
「早く起きすぎてしまって…」
「あるよね、そういうの。」
「はい。」
「この間は、ごめんね。」
「え…?」
「学校案内のとき。」
「あ、いえ…こちらこそ、すみません。」
「…」
「…」
「俺ね。いっつもあの部屋に居たんだ。」
あの部屋、というのはきっと調理室の事だ
ろう。
黙って頷く。
「でね、そこでさ、とんでもなく面白い奴に
会ってさ。初めてあった時から、お菓子作
りしてた。」
「…」
私は何も言わずに黙って聞いてることにし
た。
「そんで、そいつが作ってたケーキがすっげ
ーうまくって、感動した。それから、授業
抜け出しては、そいつの居る調理室に行っ
て、話したり、お菓子食ったり、一緒に作
ったり…めっちゃ楽しかった。で、将来は二
人とも、『パティシエになろう』って言っ
てた。でもまぁ、俺は下手くそだったけ
ど。」
「楽しかったんですね。」
「うん。でさ、そいつずっと言ってたん
だ。『可愛くて仕方ない妹がいる。だから
妹が喜ぶものが作りたい』って。全く、シ
スコンだよなー」
その人の事を楽しそうに話す宇佐木さん。
笑った横顔があどけなくって、見とれてし
まう。
これがイケメンの特権だろうか。
「それで、その人とは?」
すると、少し悲しそうな顔になる。
「大学入る前にいなくなった。ある日ぱった
りいなくなったからね。もうずっと会って
ない。音信不通、ってやつ?」
「寂しく、ないですか?」
「んー。寂しくない、って言ったら嘘だけ
ど、きっとあいつの事だから、今頃楽しく
やってそうな気がする。」
風がふく。
「羽咲ちゃん」
いきなり名前で呼ばれて、ドキッとする。
「羽咲ちゃんは、会いたい人はいないの?」