隣の部屋にフランス人
*
そして、とうとうやって来てしまった
王子がフランスへ帰る日…。
私とお母さんは、王子と一緒に空港へ向かった。
お父さんは仕事だから、
家でさよならをした。
「ルイ君、落ち着いたらまたいつでも遊びに来てね。
おばさん達の家は、いつでもウェルカムよ」
「ありがとう…」
「二人とも最近どうしたの?
前まであんなに仲良かったのに」
「リリーは怒ってるから」
お母さんの問いかけに少し間を空けて王子がぽつりと言った。
「ち、違うよ!怒ってないよ!」
「そうなのか?」
「怒ってるんじゃなくて…
話したら、悲しくなりそうで…」
「あら、莉々、すぐ会えるからいいじゃないの」
「お母さん!フランスは隣の町じゃないんだから!
飛行機で半日もかかるんだよ!」
「だけど、お互い会いたいと思ってるなら、またすぐ会えるでしょ」
「リリーに会いに来るよ、絶対」
「待ってる…」
空港までのリムジンバスに揺られて、
私は王子が来てからの毎日を思い出した。
あー、夢みたいだったな。
もういっそのこと、夢だったってことにしようか。