隣の部屋にフランス人

私はちらっと
顔を上げて、王子を見てみた。



ぐわぁ!!!


つり革をしっかり握る王子の右手…

長袖だから腕はよく見えないけど、
生腕が見えてしまったらパニックになりそうだ。

そして、下から見上げる王子の横顔…

いつも割とかわいい王子の表情とは全く別の
キリッとした、男らしい顔だ。

今回は王子というより、騎士といった方がいいかも。


時々電車が大きく揺れて、
体勢を崩しそうになると、
王子は左手に力を入れて強く私を抱きしめた。

いや、抱きしめてるというと王子に失礼だな。
支えている、だね。


こんな私みたいな、不細工モンスターを
王子が抱きしめたいわけがない。


「リリー、苦しいか?」

「だ、大丈夫…」

私はまた、下を向いて答えた。


いかん、このまま王子を見ていたら、
どきどきしすぎて、心臓が大爆発する。


こんな、夢の様な状況が、
私に降りかかるなんて!
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