隣の部屋にフランス人

*

「リリーの作ったそば、おいしい」

「いや、私はただ、湯がいただけだからね」

「でも、おいしい」

あの後、王子は普通に起きてきて、
いつもと変わらぬ様子。

再びこたつに入ってテレビを見ながら
そばを食べる。
その後は、お菓子を食べながら、ちょっとお酒を飲んで…
別に特別でも何でもない大晦日の情景だけど、
王子と二人きりだから、私にとっては特別かも。


だけど、王子が泣いてたこと、少し気になる。
王子が泣くなんて、見たことなかったから。

「ルイ、大丈夫?」

「うん、おいしいよ」

「いや、そういう意味じゃなくて、
何かあった?」

「何も」

王子はそう言って、いつもの王子スマイルを見せてくれた。

「何かあったら、いつでも言ってね」

何もないって言われたら、
それ以上しつこくするのもよくないよね。

それに、王子、すごく楽しそうにしてるし。

それが、本当なのか演技なのか、
どっちなのかは分からないけど。


もうすぐ、今年が終わる…

24歳の冬。初めて彼氏ができて、
色んな初めてを経験できた。
これからも続くであろう、王子との楽しい生活に期待して
新年を迎えるとしよう。
< 95 / 104 >

この作品をシェア

pagetop